御曹司様のことなんて絶対好きにならない!
これ以上睨まれると正直、仕事にも差し障りが出そうだし、私の精神衛生上も良くない。

入社して7年、目立たず地味にコツコツと敵を作らないようにやってきたというのに‥‥神様はなんで私にこんなイジワルをするんだろう。


「全部坊っちゃまのせいだ」


誰にも聞こえないように呟いて自席に戻る。

とはいえ、仕事だ。これに関しては坊っちゃまを責めるわけにはいかない。
それにこの案件自体は、楽しみなのだ。


まだ日本には紹介されていない食材の可能性を考えながら、取引先に紹介する。食べ方や料理の提案をして、試食会を開催して、商談に結びつける。

もちろんアシスタントの私が直接商談する事はないけれど、料理や食べ方について意見を出したり社内の試食会をしたり。
食の好奇心を掻き立てる事が沢山あるのだ。


ここは仕事と覚悟を決めるか。


ハァッと息を吐いて覚悟を決めて、仕事を再開した。
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