御曹司様のことなんて絶対好きにならない!
「‥‥信じますから。だから離してください」

坊っちゃまの胸をかるく押して体を離すと、資料室のドア側に移動した。

「わ、私も!私も先にオフィスに戻ります!」

言い捨てて急いで資料室の外に出て走って戻った。


鼓動が激しいのは走ってるから。触れられた額が熱いのは気のせい。きっとそれだけだ。だから胸で膨らむこの気持ちも、気のせいだ。


自分を無理矢理納得させてオフィスに入ると、自席ではなく、知恵ちゃんの席に急いだ。

「知恵ちゃーん!私もう、よく分かんないよ」

ベソをかいて泣きついた私に驚いた知恵ちゃんが、よしよしと頭を撫でて落ち着かせてくれた。

「どうしたのよー。何かあった?」

恋愛に関しては完全なる私の師匠知恵ちゃんに小会議室での出来事とさっきの資料室での話をする。

「なるほどね。でも、悪いけど井深さんの女癖の悪さは割と有名だよ?」
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