御曹司様のことなんて絶対好きにならない!
ゆっくりと私の顔の横に手を出すと、そのまま肘を曲げて来るから、坊っちゃまの顔がすぐ前に近づく。

「でも、香奈美さんには関係ないでしょ?香奈美さんが今、考えなきゃいけないのは俺の事だけなんだから」

更に近付く坊っちゃまの顔に思わず目を瞑る。

でも、予想した熱は唇には感じない。
そおっと目を開けると、私を愛おしそうに見つめた坊っちゃまが額に軽く口付けた。


「だから、襲ったりしないって言ったでしょ?俺、真面目だから」

「でも社外で遊んでるんでしょ?」

瞳を伏せたまま、突っかかる。自分でも可愛くないとは思うけど、こうでもしないと恥ずかしくて話す事も出来ない。

「それも香奈美さんに惚れるまで。
だからこの半年、まったく遊んでない。信じられない?」


信じられる。信じられるから、困る。
そんなまっすぐに言われたら疑えないから。自分の気持ちにも気付いてしまいそうだから、困るんだ。
< 45 / 148 >

この作品をシェア

pagetop