御曹司様のことなんて絶対好きにならない!
駅について係長の姿を探す。
私よりも先に退社してたからもう着いてるはずだ。


ロータリーの先、植込みの近くに係長は立っていた。


相変わらず格好いいなぁ。姿勢がいいからスーツも決まって見えるし、雰囲気あるし。
前を通り過ぎる女子高生が振り返ってキャアキャア騒いでいるの気付いてるのかなぁ。


無反応で前を向い向いている係長に近寄る。

「お待たせしました」

私を認めて初めて、その顔に表情が浮かぶ。嬉しそうに。

それは私の鼓動を騒がせるのに充分な威力で、胸を射抜いた。



あぁ、もう認めよう。私はこの人が好きなんだ。気になるとか好意があるとかじゃなくて、心の奥から好きなんだ。



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