副社長とふたり暮らし=愛育される日々
「軽々しくそういうことをしない人だと信じてたから、朔也さんにあのお願いをしたんですよ。でも……やっぱり俺は人を信頼しすぎなんだろうな」


嘲笑を漏らし、すっと立ち上がったお兄ちゃんは、私のそばへ来て腕を掴む。


「このままここに置いておいたら危険なので、瑞香は連れて帰ります」

「ちょ、お兄ちゃ……!」


険しい顔をした彼に無理矢理立たされ、私は戸惑いまくる。

本当にこのまま家に帰るの? 私はそれでいいわけ?

玄関に向かって手を引かれていきながら考えるも、私の足は勝手にブレーキをかけようとしていた。

その時、私たちの間に入ってきた手が、お兄ちゃんの手首を掴む。足を止めた私たちが見やるのは、真剣な表情の副社長だ。


「こいつに愛を与えることの、何が危険なんだ?」


開いた形の良い唇は、そんなひと言を放った。

私は目を見開いて固まり、お兄ちゃんは面食らったようにぱちぱちと瞬きして、「あ……愛?」と反すうしている。


「千紘がいない間、こいつが寂しがってたことはわかってるよな?」


副社長は、痛いところを突かれたように押し黙り、眉を下げるお兄ちゃんから、私に目線を移しながら続ける。


「その寂しさを、俺が埋めてやりたいと思った。瑞香のことを、愛してやりたいって」

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