副社長とふたり暮らし=愛育される日々
「まさか瑞香、友達の世話になってるっていうのは、嘘……だったのか?」


そう、嘘をついていたのは私も同じ。ちゃんと、本当のことを話さなくちゃ。

私は一度お兄ちゃんを見つめると、頭を下げてしっかりと謝る。


「ごめんなさい。本当はずっと、副社長のお世話になってました……」


なぜか敬語で言い、ゆっくり顔を上げる。目の前には、口を半開きにして固まる、相当なショックを受けた様子のお兄ちゃんがいた。

そんな彼に、いまだに余裕そうな副社長が、簡単に説明してくれる。


「クリスマスにお前の頼み事を聞いてやったら、ちょうど瑞香が困ったことになったから助けたまでだ」

「それに関しては感謝します。本当にありがとうございました。でも、だけど……」


ちゃんと頭を下げてお礼を述べたお兄ちゃんだけど、そのままぐっと手を握り、だんだん苦しげな声を絞り出し始める。


「ひとつ屋根の下にふたりで暮らすって、それはもう、瑞香を……瑞香を……!」

「安心しろ。まだいただいてないから」

「“まだ”って! “いただく”って!」


副社長のあらぬひと言に、彼はバッと勢い良く顔を上げてつっこんだ。これには私も同じリアクションをしたいけれど。

お兄ちゃんは頭痛を堪えるように額に手をあて、困り果てたようなため息を吐き出して言う。

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