副社長とふたり暮らし=愛育される日々
エレベーターに飛び乗り、扉が閉まった途端、大きく息を吐き出した。胸がざわめいて落ち着かないのは、走ったせいなんかじゃない。

三嶋さんって、朔也さんと何か関わりがあるの?

あの会話からは詳しいことはわからないけれど、ただの仕事仲間という関係だけではないような気がする。そうじゃなければ、“誰を選ぶかはあの人次第”だなんて言わないだろう。

まさか、三嶋さんは朔也さんのことが、好き……?

そう考えると、胸の中がもっともやもやして、焦りのような、嫌な感じが溜まっていく。

唐木さんに自分の陰口を叩かれても、こんな感覚にはならなかった。なんだろう、これは……。


得体の知れない感情を抱きつつ、買い物をしてマンションに帰ると、いつものように夕飯の準備を始める。

ふくろうでも人気のコロッケを作りながらも、今日のことを思い出して上の空になってしまう。

香水の件はうまくいかないし、朔也さんと三嶋さんのことも気になるし……。こんなに頭を悩ませるのはかなり久々だ。知恵熱が出そう。


「おい、もういいんじゃないか?」


ぼうっとしていた私の耳に、突然低い声がして我に返った。いつの間に帰ってきたのか、朔也さんが隣に立っている。


「わぁ、朔也さん!? ……あ!!」


何やら私の手元を覗き込んでいる彼の視線を辿って、叫んでしまった。

油の中に、焦げ茶色になったコロッケが浮いていたから。

< 163 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop