副社長とふたり暮らし=愛育される日々
東京の副都心にあり、周辺はオフィス街。お弁当を買いに来るサラリーマンや、仕事帰りに寄るOLや主婦で毎日賑わっている。手作りの温かみがある味が人気なんだとか。

ユーフォリックモードの本社も、実は道路を挟んで斜め向かいにあったりするのだ。私が本社に出向くことは、あまりないけれど。

調理場も四、五人で働くのがちょうどいいくらいで、決して広くはないけれど、このこじんまりとした感じが、私はとても居心地がいい。

働き始めて早四年。人が良い店長家族やおばちゃんたちと、平和な日々を送っている。


芳江さんと一緒に、せっせとコロッケを作っていると、店内のほうから色めき立った声が聞こえてくる。店長の奥さんと、惣菜を補充しに出ていたおばちゃんの声だ。


「あ。来たわね、ジェントル」


女性陣の楽しそうな声で、何があったか芳江さんも気づいたらしく、調理台の前方にある店内を見られる窓を覗いている。

“ジェントル”というのは、芳江さんたちがつけた、イケメンなお客さんのあだ名だ。それはそれは麗しい外見らしく、対応も紳士的で素敵な大人の男性なのだとか。

私はほとんど表に出ないから、お目にかかれていない。わざわざ見たいわけではないけど、あまりにも皆が騒ぐからちょっと気になっている。

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