副社長とふたり暮らし=愛育される日々
業者のおじさんが言うには、家電と繋いでいた配線が損傷して、それにまで影響が出てしまったのだとか。とにかく今冷蔵庫や洗濯機が使えないことは確かなのだから、もう買い替えるしかない。


「今回の修理代だけでもかなりするのに、家電まで買うなんて……私の貯金と労力が~」


うんともすんとも言わない、ただの入れ物と化した冷蔵庫の前で座り込む私は、本気で泣きそうに……いや、ちょっと泣いていた。

電話の向こうの七恵も、困り果てたようなため息を漏らして唸っている。そうして少し考えたのち、彼女はこんなことを言い放つ。


『もうここは副社長にすがるしかないんじゃない? 昨日もいろいろとしてくれたんでしょ?』


それを聞いて、私はぴたりと一時停止した。

そういえば、昨日副社長は『何か困ったらすぐ電話しろ』と言っていたっけ。あのあと番号も教えてくれたし、連絡することはできるけど……。


「でも、助けを求めたとしても、“同情するなら金をくれ”的なことなんて到底言えないし……」

『言わなくても、副社長ならすんなり出してくれるかも』

「やだよー、そんな金づるにしてるみたいで」

『じゃあ自分でなんとかしな』

「うあぁ、七恵のイジワル~!」


確かにその通りなんだけど。結局自分でなんとかするしかないんだけど!

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