副社長とふたり暮らし=愛育される日々
「いいもんだな。待っててくれる人がいるって」
穏やかな声で紡がれたひと言が、トクンと胸を打った。
私も、いつ帰ってくるのかわからない人を待つのは嫌だけど、ちゃんと帰ってきてくれるなら、待っている時間も幸せかなと思う。
バッグの中には、この間もらった合い鍵が大事にしまってある。これは、私たちの繋がりの証だ。
“捨て猫と、それを拾った飼い主”みたいな関係の私たちだけど、今、私の心はとても満たされている。
コンシェルジュの女性に挨拶するのは、徐々に慣れてきた。今日もそうしてエントランスを出て、グレーのタイルが敷かれたアプローチを抜けると、副社長の愛車と似た、こちらも高級そうな白い車が一台路駐している。
その運転席から、見覚えのある眼鏡をかけた小柄な男性が降りてきて一礼する。相変わらず無愛想な明智さんだけれど、副社長から私に視線をずらした瞬間、明らかに表情が強張った。
私をじっと見つめたままの彼を不思議に思いつつ、とりあえず会釈すると、副社長が普通に新年の挨拶をする。
「明智、あけましておめでとう。今年もよろしくな」
「あ、えぇ、こちらこそよろしくお願いします……というか副社長、そちらの女性は……?」
あ、あれ? 明智さんがとっても不審そうにしている。私が一緒だってこと、聞いていないのかな?
穏やかな声で紡がれたひと言が、トクンと胸を打った。
私も、いつ帰ってくるのかわからない人を待つのは嫌だけど、ちゃんと帰ってきてくれるなら、待っている時間も幸せかなと思う。
バッグの中には、この間もらった合い鍵が大事にしまってある。これは、私たちの繋がりの証だ。
“捨て猫と、それを拾った飼い主”みたいな関係の私たちだけど、今、私の心はとても満たされている。
コンシェルジュの女性に挨拶するのは、徐々に慣れてきた。今日もそうしてエントランスを出て、グレーのタイルが敷かれたアプローチを抜けると、副社長の愛車と似た、こちらも高級そうな白い車が一台路駐している。
その運転席から、見覚えのある眼鏡をかけた小柄な男性が降りてきて一礼する。相変わらず無愛想な明智さんだけれど、副社長から私に視線をずらした瞬間、明らかに表情が強張った。
私をじっと見つめたままの彼を不思議に思いつつ、とりあえず会釈すると、副社長が普通に新年の挨拶をする。
「明智、あけましておめでとう。今年もよろしくな」
「あ、えぇ、こちらこそよろしくお願いします……というか副社長、そちらの女性は……?」
あ、あれ? 明智さんがとっても不審そうにしている。私が一緒だってこと、聞いていないのかな?