副社長とふたり暮らし=愛育される日々
私も戸惑っていると、副社長は思い出したように「あぁ」と声を漏らす。


「そういえばまだ言ってなかったか。この子は最近一緒に住み始めた……猫だと思ってくれればいい」

「猫!?」


冷静沈着そうな明智さんでもあんな顔をするんだ、と思うくらいギョッとしているけど、無理はないだろう。

副社長、さては説明するのが面倒になったな。まぁ、猫で構わないんですけど。

私もとりあえず自己紹介をしなければと、明智さんに向き直る。


「えっと……副社長に拾っていただいた春原瑞香と申します。よろしくお願いします」

「そういうことだ。明智も可愛がってやってくれ」

「意味がわからないんですが!」


頭を下げる私の横で、副社長が笑顔で言い、明智さんはさっぱり理解できない!というように顔をしかめていた。


ひとまず遅れないように車に乗ると、副社長が「彼女の職場は本社のすぐそばだから」と伝える。副社長は“ふくろう”の存在を知っていたらしく、私がそこに勤めていると言った時、すぐに理解してくれたっけ。

渋々車を発進させた明智さんは、バックミラー越しに後部座席に座る私たちにちらりと目線を向ける。


「副社長、くれぐれも仕事に支障をきたさないようにお願いしますよ」


なぜそんな忠告をするのだろうと思っていると、副社長はフッと鼻で笑う。

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