副社長とふたり暮らし=愛育される日々
それから約一週間後、クーポンをもらったという七恵に誘われて、初めてのエステサロンにやってきた。
アジアンっぽい雰囲気の落ち着くペアルームで、それぞれのエステベッドにうつ伏せになり、私は芳江さんとのことを話した。
長い髪をアップにして、綺麗なうなじと背中を見せる七恵は、私に顔だけ向けて以前と同じことを言う。
「やっぱりもう正体バラしちゃえばー?」
「このままでいいんだって。説明するのも面倒だし、今後もモデ……副業を本業にするつもりはないから」
一応エステティシャンの女性に感づかれないよう、さっきから身バレしそうな言葉や固有名詞は出さないように気をつけている。たぶん、私たち以外何のことを言っているかわからないだろう。
七恵は手の甲に顎を乗せ、少しだけ不満げな声を出す。
「でもさ、もっといろんなことにチャレンジしたい!もっと有名になりたい!っていう、欲とか向上心はないの? 好きなんでしょ? モデ……あっちの仕事」
七恵もモデルと言いそうになるのをなんとか堪えて言い直した。なかなか気を遣う。
彼女の言う通り、Mimi以外の仕事もしてみたいという意欲は多少ある。かと言って、自分がモデル一本でやっていけるとは思えないし、今みたいな趣味ぐらいに留めておきたい気持ちのほうが大きい。