副社長とふたり暮らし=愛育される日々
「欲がまったくないって言ったら嘘になるけど、今以上の世界に足を踏み入れて私なんかが相手にされるのか、自信ない」


背中をマッサージされる気持ち良さに目を閉じながら本音をこぼすと、七恵はあっさりと素っ気なく言い放つ。


「それじゃあ無理ね。自分に自信がなきゃ、あの世界では大成しないわ。ムリムリ」


閉じていた目をゆっくり開く私。なぜだろう、無理だと言われるとなかったやる気が出てきてしまうのは。


「……そう言われるとやってやりたくなるな」

「でしょー? 瑞香は冷めてるとこ多いけど、案外負けず嫌いだったりするもんね」


してやったり、と言いたげな顔で笑う七恵を見て、つい乗せられそうになってしまった自分に呆れる。

まぁ、“自分に自信がなければモデルなんてやっていけない”というのはもっともだし、そう簡単に決められることではないけれど。


「私は本当にイケると思うよ。最近、副社長のおかげでちょっと色気出てきたような気がするし」


意味深な笑みを見せる七恵の言葉で、副社長の姿が頭にぽんっと浮かんだ。

ていうか、彼のおかげで色気が……って!


「何言ってんの! 何もされてないよ!」


マッサージされていることも忘れて自分の肩を抱き、バッと七恵のほうを振り向くと、彼女は少々呆れ顔で「そういうヤラシイ色気じゃなくて」と補足する。

< 91 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop