王様男と冷血男の間で
俺の目を見たらどうなると思う?
円は昨晩のことを思い出していた。

キングが来なかった事と…

真蔵が

「好きだったら?」

って言った顔を…

何方かと言えば真蔵のことを考えてる。

そして真蔵のことを考えて溜息をついてる自分に気がつく。

(どうかしてる。)

そこへ麻耶がやって来た。

「どうしたの?溜息なんてついて。
婚約者がまた何かした?」

「アイツは悪の根源よ!人のことからかって!」

麻耶はそんな円を見てニヤニヤしている。

「何で笑うの?」

「いや、案外上手くやってるなーって思って。」

「上手くなんていってないから!」

円はその日の夜もクラブに出掛けた。

キングを待ちわびながら飲んでいると
またしても入り口に人が集まり
キングが現れた。

しかしキングの姿を見かけると
何となく気が重たくなって
円はその日は遠くから見るだけで
キングの席まで行かなかった。

「どうして今日は行かないの?」

麻耶は円の顔を覗き込んで音に掻き消されないよう
大きな声で円に言った。

「何か気分が乗らなくて。」

「え?どうしたの?珍しいこともあるんだね。」

麻耶は常連の男の子に誘われて踊りに行ってしまい、
円は一人ぼーっとお酒を飲んでいた。

「円、昨日はごめんね。」

いきなり耳元でキングの声がして円は振り返った。

「どうしてここに?」

「今日円が席に来なかったから昨日のこと怒ってるんだと思ってね。」

キングは相変わらずサングラスをかけて
本当の自分を隠しているようだった。

「何でサングラスかけてんの?

その目が見たい。」

円がサングラスを外そうとすると手首を掴まれた。

「円が俺の目を見たらどうなると思う?」

「何それ?石にでもなるの?」

「なるかもなー。」

キングは笑って誤魔化したけど
円はますます疑っている。

「もしかして東原って苗字じゃありません?」

「え?」

「弟かお兄さんが居ませんか?」

その時黒い服を着た男が数人現れて
キングはそちらを見ていた。

「円、悪いけど今日はこれで。また会おう。」

そういうとキングは姿を消してしまった。

円はキングは誰かに追われているんだと思った。

(あの黒服の男たちは何?キングの事探してるみたいだけど…

キングって一体何者なんだろう?

もしかしてヤバい人なんじゃ…)

その日はあまり気分が乗らなくて
クラブを早々に出てタクシーを拾い、
乗ろうとするといきなり隣に人が乗ってきた。

「誰?」

円が横を見るとそこに座っていたのは真蔵だった。

「ど、どうしてここに?」

「お前が遊んでるのは分かってるんだ。」

「あ、後をつけたの?」

「さあな。」

真蔵はそういうと自分の着てるコートを円の脚にかけた。

「短すぎてパンツ見えそうだ。」

円はそんな真蔵に少しだけキュンとした。





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