王様男と冷血男の間で
本当の気持ち
ブティックを出た後は近くのホテルで食事をして
バーで少し飲んだ。

「泊まって行くか?」

「え?」

「男を知りたいんだろ?

結婚前に知りたいなら教えてやるよ。」

円は飲んでいたカクテルが口から出そうになった。

「ば、バカなこと言わないで!

何であんたなんかと!」

「他の男と接触して病気でも移されたら困る。」

涼しい顔をしてそんなことを言う真蔵とは真逆に
円は顔を真っ赤にして下を向いた。

「何で移るのよ?」

「結婚したら嫌でも俺と寝る事になる。

子どもは作らないとな。

重大な問題だろ?」

円はますます赤くなって汗が出てきた。

「あ、あんたなんか既に病気持ってるかも知れないでしょ?」

「健康診断はしてる。

それも調べてから結婚するか?」

「そ、そうして!」

「お前も調べろよ。」

「私は…大丈夫よ!」

「わかんないだろ?

毎晩男漁ってるヤツを信用出来るか?」

「だから、そういうんじゃないの!

ただ普通に誰かを好きになったり…
愛されたりしたいだけだよ。」

真蔵はそんな円がすごく可愛くて
思わず抱きしめたくなった。

「俺を好きになればいい。」

その一言で円はの胸はまたキュンとする。

「そうすれば結婚する前に別れなくてもいいし、
辛くないし、一石二鳥だろ?」

「す、好きな人がいるって言ったでしょ?」

真蔵は円を睨みつける。

「クラブ通いの男なんてロクでもないヤツしか居ないだろ。」

「は?偏見だよ!すごく素敵な人だっているもの!」

「お前はその男のことをどれくらい知ってるんだ?」

そう言われて円は返す言葉を無くした。

キングについて何も知らないし、
黒い男達の影や、顔を晒さないのも気にかかる。

「下らない男に引っかかるくらいなら俺にしとけ。
可愛がってやるから。」

円は言葉を無くして恥ずかしそうに下を向いてる。

そんな円を真蔵は優しく見つめている。

円は真蔵の顔をいつもちゃんと見れないから
そんな真蔵の優しい表情も知らないままでいる。

「そろそろ帰るか。」

「うん。」

クルマに乗ると真蔵が円のシートベルトを締めようと身を乗り出した。

真蔵の身体が覆い被さるように近くに来ると円の心臓を打つ音が聴こえそうなくらい高まった。

そんな円に気がついたのか真蔵が円の顔をみる。

目が合うと恥ずかしくて円はすぐ目を逸らした。

「目を逸らすな。」

円がもう一度勇気を出して真蔵を見ると
真蔵の大きな手が円の頰を包んで優しくキスしてきた。

円は逃げることも出来なくてそれを受け入れた。

その時、円は初めて自分の気持ちを知った。

(私…まさか…真蔵のこと…好きなの?)

まさかとは思っていたがもう認めるしかなかった。

「お前は俺と結婚するんだ。諦めろ。」

そう言って真蔵は円の心を揺さぶった。

円は胸が苦しくて窓を開けて深呼吸した。





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