王様男と冷血男の間で
同じ屋根の下
真蔵とキスをした帰り道、
円はまともに真蔵と話しも出来なかった。

家の前まで円を送り届けると
真蔵はいつもの調子で

「じゃあ日曜にな。」

と言った。

円は別れるのが惜しくて

「ウチでお茶でも飲んでって。」

と言ってみた。

「いや、帰って酒でも飲むよ。

車だからバーでは飲めなかったしな。」

「あ、そうだった。ごめん、私だけ飲んじゃった。」

「でもご両親に挨拶だけして行くよ。」

真蔵は車を降りて玄関まで円と歩いた。

背が高く、完璧なスタイルはキングとそっくりだった。

「あの…自分にそっくりな人って世の中に3人いるって言うでしょ?」

「何だよいきなり。

「あなたによく似た人がいるの。」

真蔵の顔が少し強張った。

「そうか。」

真蔵はそれ以上は何も言わない。

その時、母親が玄関まで迎えに出てきて
話はそこで途切れてしまった。

「お帰りなさい。

真蔵さん、良かったらお茶でも飲んで行って。」

母親が真蔵を誘ってくれて円は内心嬉しかったが
帰りたいと言っていたので母親を止めた。

「お酒飲めなかったから早く帰って飲むんだって。」

「あら、ならウチで飲んで行ってください。

主人が飲んでますから。

明日は土曜日だしお休みでしょう?

泊まって行ったらいいじゃないですか。ね?」

母親は強引に真蔵を家に誘って
真蔵は断りきれず家に泊まることになった。

円は嬉しい半面、緊張している。

「お宅には連絡しておきますね。」

円は母親とお酒の肴を準備する手伝いをした。

その間、何度も真蔵と目が合ってその度に胸が高鳴った。

何より両親の喜ぶ顔を見ると円も幸せな気持ちになった。

父親は喜んで飲み過ぎて早く眠ってしまった。

真蔵がお風呂に入ってる間に
円の部屋からは離れた客間に布団を敷いた。

それでも同じ屋根の下に真蔵がいるかと思うとドキドキして中々眠れなかった。

眠れなかった円は喉が渇いてキッチンに水を飲みに行った。

その時、真蔵がトイレに起きて
円がキッチンに行くのに気がついた。

真蔵はそーっと円に近づき
びっくりして大声を出さないように
いきなり円の口を右手で塞いだ。

円はびっくりして身体が硬直している。

真蔵は

「シーッ」

と人差し指を口の前で立てて
円の口を塞いでいる手を離した。

「眠れないのか?」

「の、喉が渇いて。」

真蔵も水を飲んで2人でダイニングテーブルに座った。

円は真蔵を見るとさっきのキスを思い出してしまう。

「お前の部屋で話すか?」

「え?」

「眠れないんだろ?

ここじゃご両親が起きちゃうだろ?」

円はそんなことになったらますます眠れなくなると思い、嘘をついた。

「で、でももう眠たいから…」

そんな円を真蔵はますますドキドキさせる。

「俺が眠れないんだ。」

「だ、ダメだよ!パパやママに気づかれたらどうするの?」

「結婚するんだから良いだろ?」

そう言って円の部屋に勝手にやってきた。











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