王様男と冷血男の間で
2番目に選ばれた男
次の朝、円の腫れた目を見た母親は心配そうに円に聞いた。

「昨日何かあったの?」

「ううん。」

円は昨日、真蔵にあんな風に言ったことを反省していた。

もしかしたら真蔵から破談して来るかもしれない。

そんなことを考えて不安になる。

真蔵の事を嫌いと言いながらも
嫌われたくないと思ってる。

とにかく破談になったら両親が大変な事になると心配で眠れなかった。

母親は元気のない円を優しく抱きしめて言った。

「結婚が嫌なら断っていいのよ。

元々私は反対したの。

おじいちゃんにも円には好きな人と一緒にさせたいって言ったわ。」

「おじいちゃんは何て?」

「円はその人の事をきっと好きになるって。

実は、詳しくは知らないんだけど…
最初は真蔵さんじゃなかったみたい。

お兄さんだったはずよ。

でもね、後から聞いたら真蔵さんの上のお兄さん達ってかなり年上なのよ。

それでなのか…真蔵さんに決まったの。

おじいちゃんが亡くなるちょっと前の事よ。

だからパパにはそんなのおかしいって反対したの。」

円は真蔵が後妻の子だというのを思い出した。

「あの人、上のお兄さん達とは母親が違うらしいよ。」

「そうよ。何か複雑なんだけど…真蔵さんはお兄さん達とは暫く一緒に暮らしてなかったみたい。

とにかくあの家の事は謎が多いのよ。」

不安そうな円の顔を見て、母親は慌てた。

「で、でも真蔵さんのお母様は優しい人だったし、
真蔵さんはしっかりしてるから大丈夫よ。

お祖父様もお父様も円の事、可愛いって喜んでくれてたでしょ?」

(もしかしたら兄弟仲とかすごく悪いのかもしれない)

と円は心配になった。

その日、真蔵から連絡が来た。

「父の誕生日パーティーがあるのでお前に出席してもらいたいんだが…どうする?

嫌なら来なくてもいい。」

円は行かない訳には行かないし
真蔵のお兄さん達にも逢えると思った。

真蔵がどんな環境で暮らしているのかわかるかも知れないと期待した。

「行きます!」

真蔵は円があまりに早く返事をしたので少し戸惑った。

円は真蔵が電話してきてくれてホッとした。

「どんな服装で行ったらいい?
ドレスコードとかあるの?」

「今夜、時間あるか?

俺が相応しい服を選んでおくから。」

「わかった。」

そして夜、真蔵は円を迎えに来た。

ドレスは既に真蔵が選んでいて
円は試着するだけだった。

「ピッタリですね。お直しは必要ありませんね。」

店員がそう言って円を真蔵の前に連れて行った。

「如何ですか?」

「うん、それでいい。

じゃあバッグと靴も一緒に包んでくれ。

あと、これを彼女に着せて今の服と着替えさせて。」

真蔵はもう一着今日のデートの服を買ってくれた。

「ありがとう。
この前も買ってもらったのに…」

「お前が着てる服は俺と釣り合わない。」

いちいち嫌味ったらしいが
円はそんな真蔵に少しずつ慣れていった。

それに今夜の真蔵は優しかった。

昨日あんな風に別れてかなり気まずかったので
円の気持ちは少しずつ軽くなっていった。







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