王様男と冷血男の間で
婚前旅行の夜
真蔵が一歩ずつ近付いて来る。

円は布団をかぶったまま出られずにいた。

「おい、外に出てるから早く服を着ろよ。」

「え?」

円はドアが閉まる音を聞いて布団から顔を出した。

「え?俺たちもするか?って何?」

音楽が聴こえていてとなりにいる麻耶と洸太の声がかき消されてる。

麻耶はスウェットに着替えて
部屋の外に出た。

真蔵が一人音楽を聴きながらリビングのテーブルで飲んでる。

「早く、俺たちもやろう。」

「え?」

真蔵はテーブルにオセロゲームを持ってきた。

「何これ?俺たちもって…」

「隣は仲直り出来たみたいだし、
俺たちがすることなんてこんなもんだろ?」

「もしかしてからかったの?」

「まさか…あっちと同じこと期待してた?」

円はホッとして
リビングの椅子に座った。

「とりあえず仲直りしたんだね?」

「まぁ、そうだろうな。結構刺激的だな。」

「うん。

…にしても壁薄いんだね。」

「直さなきゃな。」

「うん。」

そしてオセロを持って部屋に入ってベッドの上で対戦した。

「負けた方は勝った方の言うことをひとつ聞くってのでどうだ?」

「うん。」

しかしアッサリと円は負けてしまった。

「じゃあ…キスしろ。」

「え?どこに?」

「お前に任せる。」

円は真蔵の頰にキスをする。

そして二回戦も呆気なく負けた。

「弱いんだな。」

「真蔵が強いんだよ。」

「じゃあ次はここにキス。」

真蔵は唇を指差した。

「えー?」

「文句言うな。負けたくせに。」

円は恐る恐る唇にキスをした。

あまりにドキドキして緊張が真蔵にも伝わってきた。

「少し散歩でもするか?」

真蔵はこのまま二人きりでベッドにいると思わず円を抱きしめてしまいそうで
円を外に誘った。

冷んやりした空気が円の頰を掠め
すこし肌寒かった。

真蔵が着ているカーディガンを円にかけて手を繋ぐ。

「そんな薄着じゃ風邪ひくぞ。」

「うん。」

何だか幸せな時間だった。

円は真蔵と結婚する事にもう不安は無かった。

「真蔵。」

「うん?」

「私…真蔵が許嫁で良かった。」

「そうか。」

真蔵の握ってる手が少し熱を持った。

「真蔵は私で良かった?」

「どうかなぁ?」

「えー!酷い。」

円が口を尖らせて怒るといきなり真蔵に抱きしめられた。

「言わなくてもわかるだろ?バカなヤツ。」

そう言って真蔵が円にキスをした。




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