純情シンデレラ
両肘を机に乗せていた私は、両手のひらで顔を覆うと、一度だけゆっくり、洗うように頬を撫でながら、ため息をついた。
その様子を勘違いしたのか、「すまない。泣かないでくれ、けんじょう君」という優しく低い声が聞こえたのと同時に、松本さんの大きな手が、私の肩に置かれた。

「泣いてませんよ」

確かに泣きたい気分ではあるけど、と心の中で呟きながら、私はスクッと立ち上がった。
椅子の脚についている車輪のきしむような音が、私たちの間に少し響く。
私の肩に置かれていた松本さんの右手は、立ったのと同時に外されたけど、松本さんも立ち上がっていた。

「けんじょう君・・申し訳ない。せっかく君が入力してくれたのに。・・・もう君は帰っていい。後は俺が何とかする」

なんて言ってはいるけれど、見上げた松本さんの顔は、明らかにしょげている。
それは当然よね。単なるお手伝いの私よりも、社内報の管理者である松本さんの方が、真の被害者と言ってもいいんだから。

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