純情シンデレラ
「まぁ、この人もこう言ってることですし。やはり確たるした証拠―――例えば他に目撃者がいるとか―――がないと、警察に行っても、事件として取り扱ってもらえないと思います」
「このまま警察に行っても、俺が犯罪者になるどころか、君が恥をかくだけだ」
「なんですってぇ!私が見てなくても、“あなたがやってない”という証拠だってないんですからねっ!」
「ぁんだとぉ?俺は痴漢するほど女に飢えてねえ!大体、俺が“痴漢”しそうな風貌に見えるか!」
「まあまあ、お二人とも。お嬢さんが痴漢に遭われたことは事実ですから。こちら側としては、混雑時に便乗して痴漢のような卑劣な行為を行えないよう、ラッシュアワーには車両や本数を増やすというような対応くらいしか、今のところはできんのですわ。本当にすみませんなぁ」

心から気の毒そうな顔をして私に頭を下げる駅長さんと駅員さんに、私は「いえっ!そんな!」と慌てて言った。

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