純情シンデレラ
ぽっちゃりと太ったおばさんが、人懐っこい笑みを浮かべながら、「いらっしゃいませー」と元気よく言ってくれたおかげで、初めて来る場所で、なんとなく緊張していた私の心も、すぐに解れていった。

「こんにちは。あの・・松本、です」
「あぁ、はいはい。時計屋さんのところのね?」
「はい、そうです」
「今日はお洗濯だけ?」
「はい。これを。お願いします」
「はいっ、かしこまりました。えーっとそれから、松本さんの背広上下、クリーニング出来上がってるけど、持って行く?」
「はい」と答えた私は、松本さんから預かっていたクリーニングの受取引換券を、お店のおばさんに渡した。

松本さんって、部屋は散らかすけど、物は失くさないタイプで良かった。
「探さなくて良いように、これは財布に入れると決めてるんだ」と言いながら、引換券をくれたときの、得意気な松本さんの表情を思い出した私は、顔に笑みを浮かべた。
その間に、お店のおばさんは、受付のすぐ隣にある出来上がったクリーニング物をつり下げているところから、松本さんのスーツ上下を見つけて、持ってきた。

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