純情シンデレラ
それから30分程、散らかっている床上のものを片づけたり、拭き掃除をして、ようやく部屋をキレイにし終えた私は、清々しい気持ちで周囲を見渡すと、洗濯物を受け取りに、コインランドリーへ行った。

「ただいま・・」
「おかえり。遅かったな」
「すみません。コインランドリーのおばさんと、少し話をしてて」
「本当はおばちゃんに捕まったんだろ?あの人はいつも話し相手を探してるからな」
「・・・それならそうと言ってくれたらいいのに・・あ。ちょっと」
「俺が持つ」

今回は玄関で待っててくれていた松本さんは、洗濯物が入った袋を、私から取り上げるようにヒョイと持った。

「後は俺がする」
「じゃあ、洗濯物はあなたにお任せします。その間に私はステーキ焼きますね」
「君も食べるんだろ?」
「え?」
「肉は優に二人分ある。米だって十分ある。それに片づけも終わった。君が拒否する理由はないはずだ」
「あぁ・・それでは、お言葉に甘えて・・はぃ」

何だか頬骨のあたりが火照ると思いながら、松本さんをじっと見た私は、心と気持ちがますます落ち着かなくて、左手でメガネのフレームに触れた。

そして何か言おうと口を開けた私は、結局「行きます」とだけ囁くように言うと、松本さんから視線を外して、台所の方へと歩いて行った。

「これ以上私をドキドキさせないで」なんて・・・恥ずかしいから言わない。

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