純情シンデレラ
「洗濯屋のおばちゃんは、利用客がいる限り、ここを閉める気はないし、たとえ新しい場所を提供してもらっても、ここを離れたくないと言っていた。たぶん、おばちゃんも長年ここで暮らしているからだろう。愛着があるんだろうな」
「あぁ。その気持ち、何となく分かります。実は、つるかめ食堂がある柳谷商店街も、ここと同じように再開発計画が持ち上がっていて」
「そうか」
「はい。“時代の流れ”と言われたらそれまでだけど、でも私は7歳の時から商店街の近くに住んでいて、食堂のおばちゃんだけじゃなくて、商店街のおじさんやおばさん、みんなに可愛がってもらいながら育ったから、その証というか・・象徴のようなものがなくなるのは、正直寂しいです」と言う私に、松本さんは「うん」と短く言いながら、2・3度頷いた。

少ししんみりしてしまった雰囲気を払うように、私はわざと元気よく「ごちそうさまでした!」と言うと、椅子から立ち上がった。

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