純情シンデレラ
ついさっき恥ずかしい想いをしたばかりだったから、できればもう永遠に会いたくなかったのに。
でもそれは叶わぬ願いだと分かっているから、せめて今日一日くらいは顔を合わせたくないという私の気持ちが、この人には全然通じてなかったらしい。
というのも、私が食堂から逃げるように電算課の部屋へ戻って10分も経たないうちに、松本さんは電算課(ここ)の出入口に立っているのだから。

自分でもわかるくらいムスッとした顔で松本さんを見上げながら「何ですか」と言った私に、全然動じない松本さんは、「ああ。これを」と言いながら、私のトートバッグをスッと前に差し出した。

「あ・・」

そうだった。
目立つことが大嫌いな私は、一刻も早くあそこから逃げ去ることばかり考えていて、結局バッグを受け取ることを忘れていた。

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