純情シンデレラ
「呉課長はご令嬢の上司なのに。あれじゃあどっちが上なのか分かんないわ」とヒソヒソ声で言った素子さんに、私は小さく頷いて同意した。

「ご令嬢ってさ、箸より重たいものは絶対誰かに持たせる主義よね」
「あぁ、それ言えてる」

あの“図式”が、まさにそれを物語ってるし。
でも呉課長は、嫌な顔どころか、丸い顔に満面の笑みを浮かべながら、喜々として姫路さんの指示に従っている。
それに呉課長は、中年太りな体型をしているにも関わらず、意外と動きは敏捷だし、姫路さんの指示どおりに花を活けているとはいえ、バランスよく、且つまとまりのある活け方をしていることに、私は感心していた。

「へぇ。呉課長って意外といけばな上手じゃない」
「ホント。実は呉課長って、いけばなをたしなんでいるのかな」
「かもね」なんて私たちはヒソヒソ声で言いながら、エレベーターのところまで来たとき、「できた!」という姫路さんの声が私たちのところまで聞こえた。

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