純情シンデレラ
お父さんが目で示した場所を見ると、私も過去何度か見たことがある白い教会が見えた。
ということは今、ちょうど街の中心部付近を走っていることになる。
同時に、目立つのが嫌いな私は、馬車が目立つ存在だと気づき、物珍し気に私たちと馬車を見る歩いている人たちの視線をたくさん感じて、ちょっと恥ずかしくなった。

「お祝いの席にピッタリな、白くて豪華な感じでねぇ。まるでおとぎ話に出てくるような・・ほら、シンデレラがパーティーに行くときの馬車って感じだったのよぅ」
「普段乗りなんだからこれで十分だろ。大体おまえは“シンデレラ”って柄か」

お父さんは、顔を左右にふることで、自分で聞いておきながら、自分で答える形を取った。

「そうよお母さん。この格好で馬車だけメルヘンチックに豪華だと、返って浮いちゃうよ?それに今から“パーティー”に行くとは言っても、着いてから着替えるようなパーティーなんだから」

お母さんは、完全に普段着の自分の恰好を見ながら、「う~ん・・そうね。今日も暑いし」と呟いた。

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