純情シンデレラ
「・・・私、目立つのが嫌いなんです」
「だったら馬車で来なきゃ良かったじゃないか」
「それは・・課長さんのおっしゃるとおりなんですけど・・・すでに両親が迎えに来てくれてたから、そうもいかなくて」

課長さんは、左手の親指と人さし指で、自分の顎をつまむように触れながら、「ふーん」と言った。

「でもっ。馬車は思ったより快適な乗り心地でした」
「馬車に乗ったのは初めてだった?」
「はい。だから、ヘンに目立ったこと以外はとても良かったので、両親には感謝してるんです。だって、もし両親が馬車で迎えに来なかったら、私は一生、馬車に乗ることなんてなかっただろうから。それに、もしあれが馬車じゃなくて人力車だったら・・・たぶん、周囲の視線がもっと恥ずかしく感じるかもしれないし」と私が言うと、課長さんは声を出して笑った。

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