純情シンデレラ
「彼女は先約がある」
「え?ホント?見上さーん。あーちょっと君、そこをどいてくれないか。大きな君がいると、小さな見上さんが見えないよ」
「松本さんっ」と私が背中に囁くと、「あぁ。君があの。ふーん」という有栖川さんの声が、“壁”越しに聞こえた。

あぁ。また周囲の視線を集めている気がする。
一刻も早く、この場を立ち去りたい!

それでも松本さんは、その場を動こうとしない。
だからか、有栖川さんは“壁”の横からヒョコッと顔を出して、「見上さん」と言った。

「わっ!」
「ご飯、食べに行こう」
「あぁ。でも私・・・」
「だから、彼女は先約があると言ってるだろ」
「頼むよー。このために僕は、わざわざここまでやって来たんだからさ。それに明日からまた出張で、君に会える時間がなくなる。だから頼むよ。この通りだ!」
「ちょっと有栖川さんっ。パーティー以来会ってないのに、そういう言い方しないでくださいっ」
「だって、君の電話番号教えてもらってないからさ」
「だから・・・」

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