純情シンデレラ
あの人は誤解してる。もう、ずーっと。
有栖川さんとは友だちで、お互いに恋愛感情は抱いていないと、何度も言ってるのに。
あのとき私は、泣いている友人を慰めるために肩を貸して、少しだけ抱きしめたのであって、それは有栖川さんだって分かっていること。
なのに、なぜ松本さんは、そのことを聞いて以来、私を避けることで、何というか・・“糾弾”しようとするのだろう。
私は有栖川さんのことを、友だちとして好きなだけだし、有栖川さんは・・・有栖川さんには・・・。

でも“あのこと”は、誰にも言うわけにはいかない。
有栖川さんから「誰にも言わないでくれ」と頼まれてはいないけれど、有栖川さんの家族にも打ち明けていないことなのだ。
そんな大事な“秘密”を、他人である私が、誰これ構わずしゃべっていいはずがない。
その点も、私のことを信頼した上で有栖川さんは話してくれたと思うから・・私は、有栖川さんへの友情と信頼を裏切るようなことはしたくない。

だから私は、誰に聞かれても、「有栖川さんとは友人です」という真実までしか答えない。
それ以上の真実を、誰にも話す必要は、ない。
でも・・松本さんにああいう態度を取られてしまうのはちょっと・・・泣きそうなくらい寂しいことだと思ってしまうのは・・・なんでだろう。

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