純情シンデレラ
もしかして宇都宮さんは、松本さんから痴漢のいきさつ“真実版”を聞いたのかしら。
それで松本さんは、私が松本さんに抱いている疑惑の想いが少しでもなくなるよう、心証良いことを言っておいてくれって、宇都宮さんに頼んだ、とか・・・。
宇都宮さんと松本さんは、同期入社で、同じ営業課で、社内では一番仲良くしてるって、宇都宮さんがさっき言ってたし。
松本さんが心を許して何でも―――たとえそれが、自分にとって不利なことだったり、恥ずかしいことであっても―――話してしまうんじゃない?

「ケイちゃん?どうしたの?」
「えっ?えっと・・・あの人の多さじゃ誰かを投げ飛ばすのはできないって、松本さん、さっき上野課長に言ってた。真面目な顔で」と私が呟くように言うと、宇都宮さんがゲラゲラ笑った。

その笑い声の中に、「は?」と素子さんの呟きが混じった後、素子さんも一緒にクスクス笑っている。

「ほ、本気なんだ、あの人!でもなんか・・分かるぅ」
「マジで。あいつらしいや」
「“やると言ったらやる”ってタイプ!」
「そーそー」
「えぇ!?でもホントにそんなことされたらわたし、余計恥ずかしい・・」
「大丈夫大丈夫。あいつはそこまで血迷ったりしない程度の常識は持ち合わせてるから」

私をなだめるように言う宇都宮さんに合わせて、素子さんも「賛成」と言いながら頷いた。

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