純情シンデレラ
「このためにギター、持ってきてたんですね」
「あいつはいつも独りだったからな。旅立ちの時くらいは賑やかに見送ってやりたいと思ってさ」
「松本さんらしい思いつきですね」と私は言いながら、同意をするように2・3度頷いた。

「お別れなのに、こう言ってしまうと不謹慎かもしれないけど・・たくさん歌ったおかげで悲しみの一部が飛んで行ったような・・スカッとした気分になれました」
「別れに悲しみはつきものだ。だからこそ、その場を悲しみ一色に染めるんじゃなく、それ以上に楽しさや喜びといった色を加えて、明るく賑やかにすべきだと思ったんだ。その方が姫路も喜ぶと思ったんだ」
「そうですね。本当に。姫路さんだけじゃなくて、その場にいた人みんな・・私も、悲しいという気持ち以上に、良い思い出の方がたくさん残りました。泣き顔だけじゃなくて、笑顔でお別れを言うことができました。姫路社長と姫路さんのお母さんも、松本さんに感謝されていましたね」
「そういう君も感謝されてたじゃないか」
「えぇ、まぁそれは、私にできるお手伝いをしたからだと・・」

私は言い訳めいたことをブツブツと言いながら、思い出したようにバッグの前面にそっと左手を置いた。

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