純情シンデレラ
被害を受けたのは、時計屋さんだけだった。

私たちが降りてきて数分後、誰かが通報したのか近所の派出所から若いお巡りさんがやって来た。
一人だけなのは、犯人とおぼしき人物がすでにいない(逃走した)からか。

松本さんは、お巡りさんに状況を説明している(そしてお巡りさんから質問を受けてもいる)時計屋のおじさんに付き添う形でそばにいるので、私は安心して、クリーニング屋のおばさんと一緒に、そこにいる人たちにコーヒーを配った。

とそのとき、「あいつらがやったに決まってらぁ!」と叫ぶように憤慨している時計屋さんの声が、私の耳にも聞こえてきた。

「あいつらとは」
「チンピラだよチンピラ!戸塚組の」
「え?」
「ワシたちは前から脅されてたんだ」
「それはどういうことですか」
「立ち退きですよ」と松本さんが言った。
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