純情シンデレラ
「ああ。社内報は、月に一度発行している不知火商事社員に向けた新聞みたいなものだと思ってくれていい。だから内容も会社や社員に関わるようなことを記事にしている」
「で、でも私、今日入社したばかりで、会社のことや、社員のみなさん全員まで知らないで・・・」
「ちょっとお待ちなさいな。松本さん!あなた、この新入りメガネを社内報づくりに手伝わせるつもりなの?そんな大事なことを、あたしというパートナーに何の相談もなく独断で決めてしまうのは、ハッキリ言ってどうかと思うわよ」
「俺は君をパートナーにした覚えはない。それに君は、今まで一度でも社内報づくりを手伝ったことがあるか。ないだろ」

姫路さんがまた突然割り込んできたとき、松本さんは咄嗟に立ち上がって、私の数歩前に立ちはだかった。
おかげで姫路さんのヒステリックな声だけ聞こえる上、姫路さんには私の小さな姿が見えないはずだ。
松本さんが壁になってくれて、よかった。
と思った矢先、「いいか」と松本さんが姫路さんに言って、クルッとふり向き、私の方を指さした。
おかげでまた、姫路さんの姿を見ることになってしまった。
素が美麗なだけに、ムスッとしてても黙っていれば絵になる姿をしている。
それだけに、私は悔しさが増していく。

こういう気持ちを「ないものねだり」って言うのかな。

< 54 / 530 >

この作品をシェア

pagetop