純情シンデレラ
「あの・・」
「なんだ」
「上野課長の苗字は、ちゃんと覚えてるんですね」
「当然だ。課長とはつき合いが長いし、社の柔道部監督だしな」
「そのうち松本さん、ケイちゃんのことを“みかみ”って呼べるようになってるから。長い目で見てやって」
「どれくらい・・」
「私の場合、先月くらいからやっと“すみだ君”って呼んでもらえるようになったわ」
「え」
「でもいまだに“すみ君”とか“すみおか君”って呼ばれる時があるけど」
「“はたなか君”もあったよな」
「そうだったか?」

そこまで違うなら―――「みかみ」と「けんじょう」みたいに―――、むしろ潔いと言えるのかも・・。
3人の会話を聞きながら、私はもう呆れるのを通り越して、感心してしまっていた。

「社内報の発行に関われば、会社のことも分かるようになるし、社内の人たちのことも知ることができる。おまけに社食の新作メニューを試し食いすることもできるぞ。もちろんタダだ」
「・・え。そ、そう、ですか・・」
「どうだ?なかなか魅力的な話じゃないか」

どれが?社食の新作試食のことかしら。
松本さん、この話をしたときが一番目が輝いてたし、声も一層弾んでた。
食欲旺盛な松本さんにとっては、やっぱり社食の新作試食が、一番魅力的なのかな。
まぁそれって、家庭料理を作ったり食べることが好きな私にとっても、悪い話じゃないと思うけど。

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