純情シンデレラ
「いてっ!おいっ!君!」と言ったその声の主は、私を見おろしている。
うわぁ。なんて大きくて・・・いかめしい人なの!?
それに、なんて分厚い体・・・特に肩から腕にかけて、スーツを着ていてもガッシリしている体型だと分かる。
こんな人が、私みたいなのを相手に、あんな行為を働くなんて。

私は、警戒心をむき出しにした顔で「はい?」と返事をした。

「掴んでる手、違うだろ」
「・・・え?」
「痴漢は俺じゃない、っつってんだよ!」
「え・・・えぇ!?そ、そんな・・」

私たちの周囲が、ザワつき始めた。
中にはおチビな私と、壁のように大きくて分厚いこの・・男性を、興味本位で交互に見ている野次馬もいる。

だから、私は元々内気な性格で、目立つことが大嫌いで。
余計な注目を―――しかもこんな形で―――集める羽目に陥ったのは、絶対この人のせい!

思い出したように、私の怒りが再燃した。

< 7 / 530 >

この作品をシェア

pagetop