純情シンデレラ
「今日君を家まで送ると言ったのは、いけばながあったからだ」
「・・・え?それはどういうことですか」
「花束を抱え持って帰るのは意外と大変だと、剛が言っていた。君は今日がいけばな初日だったから、多分知らなかっただろうと思ってな」
「あ・・・それで・・・」
「案の定、俺には小柄な君が、この中に埋もれているように見えたぞ」
「そんな大げさな!」

でも。松本さんは結局、私から花束を取り上げたあの時から、今もずっと―――切符を買おうと、背広の内ポケットからお財布を取り出したときでさえ―――、大きな片手で花束をラクに持っていて、私に持たせようとしない。
まぁ、ラッシュ時ほどの人の多さじゃないけれど、おチビな私にとって、大きめの花束を抱え持ちながら電車内で立つのは、ちょっとキツいことだろうから・・・これって、助かってるってことなんだよね?
「花束に埋もれているように見えた」っていうのは、明らかに大げさな表現だけど、でも・・・そっか。
宇都宮さんは、彼女の素子さんがいけばなを習っている関係でそのことを知ってて、いつもいけばながある日は車で送ってあげているのか。
優しいな、宇都宮さんは。
そして松本さんも。
今日は締日で、営業の方たちは忙しかったはずなのに。
やっぱり松本さんは、私を待っててくれたんだ。

私はニッコリ微笑みながら、松本さんに「ありがとうございます」とお礼を言った。

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