純情シンデレラ
「ここが君の家なのか?」
「違います。けど今日はお母さん、お勤めの日だから、まだ食堂にいるはずで。おと・・父もたぶん来てるから・・・」
「そうか。じゃあ俺はここまででいいんだな?」
「はい・・」
「それじゃあこれを。持てるか?重いぞ」
「あ・・あのっ」
「ん?なんだ、けんじょう君」
「寄っていきませんか?食堂に。お礼に晩ごはんをごちそうさせてください。今日は締日で普段より忙しかったでしょうし。松本さん、おなかすいてるでしょ?だからその・・もしよければ、ですけど」

私は、松本さんの機嫌を伺うように上目使いに見上げながら、思いきって言った。
だって、「花束が重いから持つ」いう理由だけで、わざわざ切符を買って、ここまで送ってくれた松本さんに何のお礼もせず、このまま帰らせてしまったら、きっと私の良心が咎めるから。

松本さんは、私の誘いを受けるか否かを、2・3秒くらい考えていたのか。
じっと私の顔を見ると、無表情のまま、私の方に差し出していた花束を、また自分の方へ引き戻した。

「確かに腹は減っているな。食べて行くことにしよう」
「どうぞ!お入りください」と私は言いながら、つい顔に笑みが浮かんでしまった。

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