純情シンデレラ
まずは痴漢行為を止めること。そのために痴漢の手を摑まえること。
最初はそれしか考えてなかった。
でもその悪党の手を掴んだら、今度は「違う!」と言い張られて、私はますます腹が立った。

自らあんな行為をしておきながら、罪を逃れようとするなんて。
最初は、今私にしている痴漢行為を止めさせれば、それでいいと思っていたけど、実際のところ、それじゃあダメだ。
もしかしたらこの人、「常習犯」かもしれない。
だからこの人には罪の意識なんて、微塵も持ってないのかも―――。

私は、唇を噛みしめて隣に座っている「悪党」の男性をジロッと見た。
すると私の視線を感じたのか、男性は、ムスッとした顔で私を見返してきた。
その仏頂面には、「迷惑だ」という表情が、ありありと浮かんでいる。
何なのよ、この人!
私だって迷惑この上ないのに!

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