失恋相手が恋人です
あの日から。

私の脳裏には彼の姿が焼き付いている。


誰もが認める容姿の彼は、言わずと知れた有名人で。

学内には彼に憧れ、恋をする女子学生が溢れていた。

色素の薄さはハーフだから、クォーターだから、とか。

実は大会社の御曹司だとか。

信憑性のあるなしに関わらず、

彼の噂は一人歩きしていた。


桧山 葵。

それが彼の名前。

私は皆が噂する、彼の名前を一方的に知っているだけ。

だけど。

頭の片隅には何故かいつも彼のことがあって。

だけど。

特に恋をしているわけでもない。

恋にはならない。

気になるだけ。

恋ではない。

いつも自分に言い聞かせている。
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