失恋相手が恋人です
訳がわからないままに。

私も自分の教室にたどり着いた。

この講義は席順が決まっているので、私は自席に座る。

呆然とした私に、最悪の事態を予測したのか、斜め前に座る萌恵が心配そうに話しかけてきた。

「……沙穂?
ね、大丈夫?」

気遣うようなその視線に。

「……大丈夫じゃないかも」

と私は机に突っ伏した状態で言う。

「ちょっと、何、本当にどうなったの?」

オロオロし出す萌恵。

そこに事務局の男性が教室に入ってきた。

「橘先生は十五分程遅れる、ということなので、皆さん申し訳ないですがこのまま静かに暫く待っていてください」

ホワイトボードにも大きくその旨を記載して、四十歳台くらいの男性はアッサリと出ていった。

事務局の男性が出ていくやいなや、萌恵は私の横の席に滑り込んできた。

「何、何があったの!?」

心配顔の萌恵に私は今、起こった出来事を話した。

十五分くらいしたら講義が始まると思い、焦りながらつっかえ、つっかえ話した。

「……本当に?」

何とかタイムリミットまでに話終えた私に萌恵は、静かにそう言った。

私は耳まで真っ赤になって頷いて。

「ほ、本当みたい……」

恥ずかしくて俯きながら返事をする。

「沙穂、良かったね!って言いたいところなんだけど……」

可愛らしい顔を曇らせて、言いにくそうに萌恵が口を開いたその時。

ガラリと扉が開き、教授が教室に入ってきた。

「遅れてしまって申し訳ない、講義を始めます」

その声を聞いて萌恵は慌てて席に戻り、私は結局、萌恵が何を言いたいのかわからずじまいだった。





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