失恋相手が恋人です
「……そっか。
今でも……?」

躊躇いがちに尋ねる葵くんに、ううん、と小さな声で返す。

他に言いようがない。

「早く傷が癒えたらいいな、お互いに」

それだけ言って彼は目を伏せた。

歩美先輩を思い出しているのか、私にそれ以上聞くのはやめようと思ったのか、何も言わなかった。

私も何も言わず、聞かなかった。


< 55 / 117 >

この作品をシェア

pagetop