失恋相手が恋人です
あれこれを考えながら歩いていると懐かしい校舎が眼前に見えてきた。

私のグラグラな心が耐えられるか自信がなかったので、門をくぐることはせず、ただただ外から私は校舎を見つめていた。

門の外から微かに見える、本館も。

思い出と一緒に涙が浮かんできて私は下を向いた。

暫くそこに立っていて、私は次の目的地に向かった。

次回は門をくぐって階段教室に行けたらいいな、それくらいに強くなれていればいいなと願いながら私は以前住んでいたマンションに向かう。

当たり前だけれどマンションは四年が経っても変わらない外観をしていた。

あまりにエントランス付近をうろうろしていると住人の人に怪しまれてしまうかもしれないと思い、私はマンションの裏手に足を向ける。

ちょうど裏手には、すべり台とベンチだけがある、公園というには狭すぎるスペースがある。

私の部屋のベランダは、この小さな公園に面していた為、日当たりがいつもとても良かった。

そんなことを思い出しながら歩く私の先に、一人の長身の男性が立っていた。

スーツ姿の男性は私の部屋だったベランダを見上げていた。

こんなところで何をしているのだろう……。

不思議に思ってジッと目を細めてよく見てみる。

……その横顔には見覚えがあった。

信じられずに私は息をすることも忘れて凝視する。

……忘れたことなんてなかった。

あの頃より少し短くなった薄茶色の髪。

細身の身体。

見惚れるくらいの端正な顔立ち。

……葵くんがそこにいた。




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