失恋相手が恋人です
「しかも独身なんですって、もう楽しみすぎてっ」
「そう……」
「私、まだお会いしてなくて。
昨日手続きや挨拶に出勤されていたらしいんですけど……。
ビックリするくらい、見たことがないくらいのイケメンだったって受付の同期が言ってましたよ!」
「……同期のお友達から聞いたのね、その色々な情報」
「違いますっ。
色々な場所からですよ。
確か週明けの月曜日から出勤されるみたいなんですけど……。
もう女子社員、皆待ち焦がれているんですよっ」
「はいはい、じゃあ私も来週楽しみに出勤します」
苦笑しながら私は通話を終えた。
梨華ちゃんは素直で可愛い後輩だけれど、驚くほどの情報網を持っていて、私は圧倒される。
ずっと彼氏がいない私を萌恵と同じように心配してくれる妹のような存在だ。
今日は金曜日。
まだ夕方五時半過ぎで特に予定もない。
私はスマホをバッグに入れて、懐かしくて切ない思い出が残る母校、以前住んでいたマンションに寄って帰ることにした。
これまではこの駅に降り立つことすら避けていた。
どうしても葵くんを思い出してしまうから。
自業自得なのに、切なさと寂しさと悲しみに押し潰されそうになるから。
蓋をした葵くんへの気持ちが溢れだしてしまうから。
だけど。
この間、歩美先輩や萌恵と話をして前を向かなければと少なからず思えるようになった。
歩美先輩から音沙汰がないので、葵くんともう話せることは会えることはないかもしれないけれど……。
それでもいつまでもその場所に留まり続けるのではなく、もう葵くんのことを思い出という場所に移さないといけないのかもしれない。
まだ諦める自信はない。
想いを断ち切れる自信もない。
けれど。
四年という時間が過ぎて。
遠いどこかで葵くんは葵くんの生活をきっと営んでいるのだろう。
……考えたくないけれど恋人だっているかもしれない。
……結婚だってしているかもしれない。
そんなことを考えるだけで胸が痛んで苦しくなる私はまだまだ先に進めないかも知れないけれど。
これ以上皆に心配はかけられないから。
「そう……」
「私、まだお会いしてなくて。
昨日手続きや挨拶に出勤されていたらしいんですけど……。
ビックリするくらい、見たことがないくらいのイケメンだったって受付の同期が言ってましたよ!」
「……同期のお友達から聞いたのね、その色々な情報」
「違いますっ。
色々な場所からですよ。
確か週明けの月曜日から出勤されるみたいなんですけど……。
もう女子社員、皆待ち焦がれているんですよっ」
「はいはい、じゃあ私も来週楽しみに出勤します」
苦笑しながら私は通話を終えた。
梨華ちゃんは素直で可愛い後輩だけれど、驚くほどの情報網を持っていて、私は圧倒される。
ずっと彼氏がいない私を萌恵と同じように心配してくれる妹のような存在だ。
今日は金曜日。
まだ夕方五時半過ぎで特に予定もない。
私はスマホをバッグに入れて、懐かしくて切ない思い出が残る母校、以前住んでいたマンションに寄って帰ることにした。
これまではこの駅に降り立つことすら避けていた。
どうしても葵くんを思い出してしまうから。
自業自得なのに、切なさと寂しさと悲しみに押し潰されそうになるから。
蓋をした葵くんへの気持ちが溢れだしてしまうから。
だけど。
この間、歩美先輩や萌恵と話をして前を向かなければと少なからず思えるようになった。
歩美先輩から音沙汰がないので、葵くんともう話せることは会えることはないかもしれないけれど……。
それでもいつまでもその場所に留まり続けるのではなく、もう葵くんのことを思い出という場所に移さないといけないのかもしれない。
まだ諦める自信はない。
想いを断ち切れる自信もない。
けれど。
四年という時間が過ぎて。
遠いどこかで葵くんは葵くんの生活をきっと営んでいるのだろう。
……考えたくないけれど恋人だっているかもしれない。
……結婚だってしているかもしれない。
そんなことを考えるだけで胸が痛んで苦しくなる私はまだまだ先に進めないかも知れないけれど。
これ以上皆に心配はかけられないから。