【完】最後の恋
ポケットの手を入れる。
手に握られているのはあのメモ…。
「星川さんの力になりたいんです」
普通の女なら、そんな事を言われれば、きっとその胸に飛び込んで行く。
アキは普通ではない…。
アキは立ち上がり、またフラフラと歩き出す。
アキは立ち止まり、空に向かって手を上げる。
『冷たい雨よ…、全てを流して…』と叫ぶ。
この時のアキの精神状態は、本当に普通ではなかった…。
まるで、三年前のあの時と同じ…。
一志が目の前から居なくなったあの時と同じだった。
心は叫び、助けを求めているのに、誰にも伝えられない…。
自分の胸にしまい込んだまま…。
ただ、涙を流すだけ…。