桜龍

秘密

――4年前

あたしは産みの親でもあるあの親から逃げるために、いつも家を抜け出し繁華街をフラフラしていた。

家に居ることができないから、煌びやかな物がたくさんあるこの繁華街にいることが多くなった。

もちろん、こんな子供がずっと外を歩いていれば補導されてしまう

そんなことくらい分かっていたから、補導されないように裏路地へ入ったりしてバレないようにしていた

「ねぇ、キミ」

後ろから声をかけられ、振り向いたら派手めなお兄さんがいた

「こんなところでどうしたの?迷子?」

子供がこんなところにいるのが当然珍しいのだろう

勝手に心配されていた

『別に。迷子じゃない。』

そう言って裏路地のさらに奥に進もうとしたら、腕を掴まれ

「じゃあさ、お兄さんと一緒に遊ぼうよ。今、暇しててさー!別にお話するだけでもいいよ。どう?」

どうせろくなことなんて考えてはいないだろう

『興味ない。』

腕を振り払おうと思ったが、思った以上に腕を強く掴んでいたために振り払えなかった

「暇なんでしょ?なら、お兄さんとお話するくらいいいでしょ?」

あたしは話すことなんてないから話したくないのに、無理に話をしようとすることにいい加減腹が立ってきて

『あんたと話したくない。手を離して。』

子供らしからぬ発言に驚いたのだろう…

それでも手を離さないから頭にきて

『離せって言ってんだよ!』

思いっきり殴ってやった

「このガキ!ふざねんじゃねぇぞっ!ガキだからって手加減しねぇぞっ!」

殴られればそりゃ誰でも怒ると思ったが、負ける気がしなかったのでそのケンカを買った

体格の違いや身長の違い、そして経験と知識の問題もあったのだろう。

あたしにはなんの攻撃も当たらないのに、子供らしからぬ力強い攻撃やすばやい防御に悪戦苦闘している。



――バタンッ

倒れたのはお兄さんの方だった

「くそっ!このガキに俺が負けただと…」

そりゃ、悔しいだろうね…

小さい子供で、それに加え女の子

攻撃が、全てかわされ当たらない…

普通ならありえないだろう…

けれど、それがありえてしまったのだから…

『すぐに離してくれればこんなことにならなかったのにね。お兄さん、無理強いはよくないよ。じゃあね。』

そう言い残し、また路地裏の奥へ進んだ

はぁ…やっぱり子供って甘く見られるんだよね…当然か…

フードを被り顔を隠すことにした



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