爆走姉貴ー星路の苦悩ー
「じゃ、星路!ちゃんと話聞いてやれよ」
「え?拓也!」



心細いよ!




「頑張って!星路!」
「美月…」
「離れた場所から見守るから!……冥土の奥深くから響く亡者の叫びと共鳴し、地鳴りにも似たケルベロスの足音を旋律にした祈りを交えながら……」
「何の儀式だ!」



どんな祈りだよ!

黒すぎる!
呪われる!

死に神を呼ぶつもりか!!




「もういいから、頼むから美月は訳わからない黒い祈りはしないで、離れていてくれればいいから」
「星路…そんな…美月さんの清らかな祈りを…」
「清らかな?!」


拓也?!
お前は聴力までも美月に奪われたのかよ!

誰が聞いても悪意と邪悪さに満ちた祈りだろうが!






「星ちゃんって、祈りのセンス無いよね」


祈りのセンス?


「そうだ、ケルベロスは冥土の番犬だぞ?」


だから何なんだよ。
冥土と言う時点で不吉さに気付けよ。






ぶつぶつ唱える二人を奥のテーブルへ押しやり、椅子に座り直す。


ゆっくりと深呼吸を繰り返し、平静を取り戻す。




よし……。


大丈夫だ。





と、思った途端!





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