こじれた恋の終わらせ方
あの後、こっそり指のサイズを測るのに失敗した千尋は、堂々と指のサイズを聞いてきた。


けど・・・



「ごめん。わかんない。」


ネックレスやピアスはするけど、もともと指輪はあまりしないから、自分の指のサイズはわからなかった。



どこまで行ってもしまらない私たちだったが、交際は順調だ。





そんなある日。


その日は私の家でご飯を食べていた。


「コーヒー、用意するよ。」



「そのまえに座って。」



食事を終えて、食後のコーヒーでもと思って席を立とうとすると、千尋に止められた。



そう言われて座りなおすと、机の上に、小さな箱が置かれた。



紺のベルベットの小さな箱。



私はその箱に釘付けになった。


「麗華。」



そう呼ばれて、ゆっくりと視線を上げると、真剣でどこか緊張した面持ちの千尋と目があった。



「俺と結婚してください。」


そう言って開けられた箱の中にはキラキラ光る指輪が見えた。


驚きで声もでなかった。



「返事は?」


そう尋ねられたけど、声じゃなくて涙がでた。

うまくしゃべれないから、何度もうなづいた。



それを見た千尋が、私の手を取って指輪はそっとはめてくれた。



ぴったりとはまった指輪に驚いて、千尋を見ると、千尋は照れくさそうに笑った。


「別の日にリベンジした。

 また、起きたらどうしようかと思ってマジでドキドキした。」



私は、そんな千尋を想像して笑ってしまった。



「ホントはさ、特別な日に特別な場所でプロポーズしようかと思ったんだけど、止めたんだ。

 麗華となら、どんな日も特別で、どんなところも特別だから。


 それに、こっちのほうが俺たちらしいと思って。かっこつけ過ぎないほうがいいだろ?」


「うん!」


最高にかっこいいあなたと、どこかかっこつかない幸せな日々を過ごして行きたい。




fin








< 29 / 45 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop