こじれた恋の終わらせ方
明け方の5時。私はそっとベットから抜け出た。


サイドテーブルに置いてあった水野のスマホを手に取る。


水野のスマホは指紋認証でロックがかかっている。


私はよく眠っている水野の手をとり、ロックを解除した。



いけないことしているという自覚はある。


罪悪感にさいなまれながら、私は自分の連絡先を水野のアドレスから、履歴から、無料の通話アプリから消した。



きっと私は、水野から連絡が来たら、それを無視することなんてできない。


だから、水野から連絡が来ないようにしたかった。


同じ中学、高校を出ているから、その時の友人から私の連絡先を聞き出すことなんて簡単だろう。


でも、私が連絡先を消した意味をきっと水野は理解してくれる。


理解して、わたしをそっとしておいてくれるはずだ。



水野の寝顔は本当に綺麗で、いつまででも見ていられる。


私は、もう会えなくなる水野の顔を目に焼き付けておこうと、じっと水野の顔を見つめた。



ちゃんと見ておきたいのに、水野の顔が涙で歪む。


嗚咽を抑えるために、両手で顔を覆った。


「愛してる」と何度もささやいた水野の声が耳から離れない。


私に触れた手の熱さを忘れられない。



私が、水野を忘れることなんてできないのかも知れない。


それでも、諦めなければいけない。



散らばった服をかき集め、身支度をした私は部屋を出た。


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