こじれた恋の終わらせ方
自分の人生でこれほどまでに自分をアホだと思ったことはない。


泣きながらホテルを後にした数時間後、私はまた同じホテルに舞い戻っていた。



見合いをするために。


よりにもよって、なぜこのホテル。


母から場所を聞かされた時は、気絶するかと思った。


昨日、横切るだけだったラウンジで初対面の男の人と向き合う。



「そんなに、緊張なさらないでください。」


「は、はぁ・・・」


この感情は緊張と言うか、いたたまれないというか。


お見合いのお相手は、津田正樹さん。35歳。少し前まで大学病院で内科のお医者様だったとか。


なんで、私がそんな人と見合いすることになったかと言えば、答えは簡単。


私の実家が病院を経営しているから。


つまりは私の旦那様を、跡取りにということ。



私には、10歳年上の兄がいる。


私と違って成績優秀。父の期待通り、医学部へ進み、そして脳外科医となった。


ここまでは問題なかった。問題はこの後。



兄は、生涯臨床医を貫きたいと言い、病院は継がないと言い始めたのだ。



父は何とか兄を説得しようと試みたが、一度うちに近づこうものなら何が何でも跡を継がされると思ったらしく家に寄り付きもしない。


そこで父は、兄を諦め、今まで見向きもしなかった私に白羽の矢を立てたのだ。


母は、私の味方だったが見合いを強く薦める父との対立を見ていられなくて、とりあえず会ってみるだけと言ってしまったのだ。


きっと、会ってしまったが最後、そのまま結婚までこじつけられるのを覚悟の上で。
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