ブラックドレスに甘い毒牙を隠して…
私の運命が、動き出す…
憂臣は震える手を押さえるように私の手を握る。
「 俺… 忘れたい事があるんだ。でも… 忘れてはいけない事で頭から離れなくて、それが辛すぎて 地元を離れて来たんだ… 」
忘れたい事…
「 何か、あったの?」
「 里桜が言ったみたいにヤンキーだったよ、かなりね。地元はさ、二つ隣の県境なんだ。
春休みに、連れが兄貴のバイク勝手に借りて一緒に乗り回してて、こっちへ遊びに来たんだ 」
話を危機ながら 胸騒ぎを感じた。
奇妙な胸騒ぎ…
それでも黙って話を聞いていた。
「 それで、事故ったんだ… 無免な上にバイクに2ケツだし、俺は後ろだったからか 書類送検に家裁で審議、観察つき…
軽く済んだと思うよ、相手、亡くなったわりにはね… 」
ドクンッ…
私の心臓が悲鳴をあげるように跳ねた。
まさか、なんて言葉 口にすら出来ない。
バイク事故は私の闇のひとつだから。
「 相手が、亡くなったの…? 」
聞きたくない…
「 …みたい。俺の連れはあの事故のあと、おかしくなっちまって病院行き… 俺、それも耐えられなくて転校生してきたわけ。事故は、相手側の信号無視って処理されたけど ほんとは逆なんだ… 」
違う…… やめて…
「 相手の人に手は合わせたの?」
「 いや… 拒否されたし、名前しか知らないんだ 」
名前…
もし、もしも…
この世に 奇跡があるなら…
「 その人、何て言うの?」
「 里桜も知ってる人だよ 」
いや……
「 倖村 綾己 (あやき)、亡くなったのは この学校の先生だったんだよ。いつか、謝りたいと思ってる… 」
奇跡があるから…
私の探し物は 見つかった。
綾己……